意識は戻ってきたけれど…

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受傷してから私の意識が戻るまでかなりの時間がかかりました。私自身は覚醒時とそうでない時の記憶がごちゃ混ぜになっているので、「いつ戻ったのか」正確には分かりません。ただ今までの現実離れしていた夢ではなくなったので「このあたりからかな?」という大体の記憶は残っています。

真っ暗な世界

長い長い夢からさめた時、私は真っ暗な空間にいました。「どうやらここは病院のようだ」ということは何となく分かりましたが、「なんで病院にいるのか?」ということを理解できませんでした。「なぜ真っ暗なのか」はよく分りません。
最初のころは誰かが来ても真っ暗な中にぼんやりと影のような輪郭が見えるだけ。声で誰が来たか判断していました。そんな状態ではありましたが、当時は「まばたきの回数」でイエス・ノーを意思表示するしかコミュニケーションをとる方法がなく、目が見えないと誰にも気づいてもらえませんでした。そのため「呼吸が止まった影響による高次機能障害で判断能力かないのでは?」と思われていたようです。

前歯がない…!

目が見えなくても舌は動かせたので口の中の状態はわかりました。何気なく上の歯を舌でなぞってみると違和感が…。そう、「前歯がない」のです!
前歯がなくなった経緯については前回書いていますが、実は1歳の時にも前歯(乳歯) を折っています。そのため「前歯がないってことは今は何歳なんだ? 」と混乱しました。
なくなった前歯の部分が気になって、よく隙間に舌を入れてみたりしていました。またこのタイミングで親知らずが生えてきたこともあって歯並びはガタガタに…。病院に歯科がなかったので歯のクリーニングをすることもなく、結果的に虫歯だらけの歯になってしまいました。

受傷直前の記憶がない

ある意味でこれが一番困ったことだったかもしれません。受傷した経緯が分からないし、直前数カ月の記憶が飛んでいるので季節もわかりません。自分では「いきなり病院の中だった」という認識でいたので訳がわかりません。家族から「自転車事故で首を骨折した」と言われても「首を折ったら死んでいるだろうが」と信じることが出来ず、「きっと何かの理由で病院に監禁されているに違いない」と思い込み、自分を病院に入れたであろう家族に当りちらしていました。ただ友人が来た時には本人かどうかを疑いつつも「もし本当だった時にこまらないように接しよう」と思って当たり散らすことはありませんでした。

今から考えるとおかしかったんだろうな…

受傷してから10数年も経った今から考えると「これはおかしかったな」と分かりますが、当時の自分にとってはわけのわからない事の連続で冷静に考える余裕などありませんでした。1日のうち覚醒している時間は僅かだったそうですが、来る日も来る日も目が覚めると真っ暗な空間…。「これはきっと悪い夢に違いない」と思い、いつになったらこの夢から醒めるのだろうと毎日を過ごしていました。もちろん夢から覚めることはなく、ただただ時間だけがすぎていくのでした。

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